─ 長年、食品業界に特化したシステムを開発されているとのことですが、具体的にはどのようなサービスを展開されているのでしょうか?
坂口:「需っ給さん」というメインのサービスがあるのですが、これは、簡単に言うと、食品業界の在庫を適正化することを一番の目的とした、業界唯一のクラウド型の需給管理システムです。管理業務の人件費の削減や、属人化しがちな業務の標準化を図っています。
─ 開発のきっかけはなんだったのでしょうか?
坂口:複数の中小の食品メーカーさんからのご要望でした。 そのメーカーさんは、需給管理業務全般をExcelで1人で管理していて、しかもご本人にしか分からない複雑なものでした。完全にブラックボックス化してしまい、業務の引継ぎや作業の分散ができない状況になってしまっていたんです。 そこで、業務の共有や、属人化していたこれまでのデータを企業全体の資産として活用できるようにと、この需給管理システム「需っ給さん」が作られることになりました。
─ 昨年、6月から施行された食品衛生法の改正に伴い、入退室に絡めた新しいパッケージを作られたというお話を聞きましたが、これはどのようなサービスなのでしょうか?
安立:はい。食品製造の現場に入る直前に、熱が無いか、爪が伸びていないか、切り傷が無いかをセルフチェックして全て問題無い人だけが入室できる、という入退出タブレット型の「衛⽣管理アプリ」になります。
紙で管理をしている会社さんは今でも多く、もちろんそれでも問題はないのですが、実際にそれらがきちんと管理できているかと言うと、実態はまた別の話になるので…。
当社が作った仕組みは、そういった中小の会社さんでも取り入れやすいように、本当にシンプルなものにしています。
あと、この衛生管理アプリって、管理の他に派遣や外国人労働者の方々に対して、〇か×くらいの簡単な衛生管理のクイズを出したりするんですよ。
毎日きちんと答えることで従業員の方のリテラシーを上げていく、ということも狙いの一つにあります。
1社でも多くHACCP(ハサップ)を取得する⾷品会社を増やしたい、⾷の安全を推進させたいという思いから開発されたサービスになっています。
─ シグマクレストさんは、2001年に約6名のメンバーでスタートされたのですね。 なぜ、食品業界に特化したシステム会社を作ろうと思ったのでしょうか?
安立:代表の高橋をはじめ、設立メンバーはもともと食品業界に特化したシステム開発をやってきていました。
IT業界の、技術者派遣やそこのマージンで利益を得るといった…人材ビジネスになってしまっているようなところに疑問を抱いていて、そういうITゼネコン構造から脱却したい、という強い思いがあったんです。
そして、小さい会社ならではの小回りみたいなところを強く売りにして、お客様の本当に困っているところ、かゆいところに手が届くシステム開発をやりたい、という思いからシグマクレストはスタートしました。
─ 今、このいわゆるシステム業界というのは、小さな会社から大きな会社、派遣中心、開発…開発もスクラッチにパッケージにと、本当にたくさんの業者さんがありますが、その中で、御社の今の立ち位置はどんなポジションになるのでしょうか?
安立:だいぶ老舗感が出てきていると思いますが、業界の立ち位置で言いますと、食品専門のシステム会社になります。お客様の企業規模はさまざまですが、年商50億円以上くらいの食品メーカーさんを中心に、様々な形で業務支援を行っています。
─ そもそも、なぜ食品製造業にフォーカスされているのですか?
安立:やはり、食品業界での経験値とノウハウがあるということですね。
代表の高橋の前職時代からになるのですが、日本最大手総合食品メーカーという日本のリーディングカンパニーさんのシステム開発を20年以上やらせていただいているということが、大きいと思います。この企業がやられていた施策やIT投資というのは、食品業界のトレンドを一歩も二歩も先を行っていて、それを、数年後に中堅ないし中小の食品メーカーさんが追随しているんです。
そういう意味では、当社が作ってきた仕組みは、応用することもできますし、他の会社さんにとっても、ノウハウとして提供できるのでメリットが大きいんです。
IT技術で食を支える「土の香りのシステム屋さん」として、システム開発をはじめ、営業を支援するITサービス、スマートフォン・タブレット型端末を用いたソリューションを提供しています。
─ 6名でスタートし、現在は46名のメンバーで活動をされているとのことですが、どのような方たちが在籍されているのでしょうか?
安立:46名それぞれ背景が異なるメンバー達なのですが、私は設立3年目にプログラマーとして入社し…その後、営業部ができたタイミングで営業になりました。
プログラマーの立場を経験した後に営業になったことは、どちら側からもお客様のことが見えるようになるので、これは自分の武器だと思っています。
あと、当社はシステム会社ではあるのですが、ただシステムを作るというよりは、お客様の役に立てることにやりがいや喜びを持っている人が多いですね。
坂口:自分たち自身が「お客様の会社のチーム」という感覚を持って、一緒に解決に向かって進んでいくというところは、やっぱり大きな強みになるんでしょうね。 小さい会社の強みを生かした小回りを武器に、大手IT企業では逆に取り組むことが難しい小さなシステム作りやサービスを提供できるのだと思います。
─ お客様に寄り添って、そのお客様のことだけ考えて。
赤字は困るけど、お客様が喜んでくれたら皆ハッピーみたいなところ、とても魅力的ですね。
─ 大手総合食品メーカーさんはちょっと先を行く仕組みを作っている、とおっしゃっていましたが、例えば「これは新しいな、目の付け所が違うな」というものは何かありましたか?
また、「御社を使って本当に良かった!」というような、一番印象深かったのはどんな言葉でしたか?
久保:そうですね、中小メーカーさんと卸店さんの間で、販促金(拡売費)をEDI(イーディーアイ)という企業間の取引データを自動でやり取りできるシステムを用いた取引を始めたい、というお話をいただくのですが、 実際、弊社のお客様は、20年近く前からその販促金(拡売費)のEDIシステムを導入しているんです。弊社がその仕組みに携わって10年以上経ちますが、 システムを開発する際も、取り込み処理や、使い方の改修などをどんどん重ねています。当然業務の効率も良くなるので、EDIの取り込みができる会社を増やしていこう、といった動きを早い段階からやっていました。 そういうところは、やっぱり大企業さんの中でも動きが非常に早いな、と思いました。
─ 他のお客様にとってみたら、本当にラッキーなことですね。
そこでのいろんなチャレンジと、成功・失敗も積んだ経験とノウハウを他の会社さんも使える。そういう意味では、御社はハブ的な役割も担っておられるように感じられますね。
坂口:私がお客様からいただいた言葉で、印象に残っているのは、「システムをつくってもらったというより、業務の問題を解決してもらった」という言葉があります。 やっぱりそのお客様の隣に立って、「この会社にとっての問題って何なんだろうな」というところから、一緒に解決に向かって進んでいくのは、自分たちの大きな強みになっているんだろうな、と。その言葉をいただいたときは本当に嬉しかったです。 シグマクレストの「隣の感覚」や「土の香りのシステム屋さん」というところは、私自身の好きなところでもあります。
─ 業界で長くやられている中で、システムも大きく変わったりするでしょうし、例えば、大手総合食品メーカーの様な先端的なものを作ろうとするときには、恐らくその時々でコンペをやったりもすると思うのですが…、お客様と長いお付き合いが継続されている理由は、どういったところにあるのでしょうか?
久保:やはり、業務の知識量というところが大きいのかな、と思います。
実際にエンドユーザーさんから「こういう修正を入れようと思うんだけど、どう思う?」という相談から始まる案件もありますし、長くやっていると、その分、業務知識が蓄積されていくので、相談を受けたときに「どのようにしたら生産性が上がるのか」という判断を、お客様と一緒にさせていただいたりしています。
あとは、エンドユーザーさんの気持ちに立って、という部分も大きいと思います。
依頼される内容は会社さんによって様々ですが、やっぱりユーザーさんにとって一番大事なのは納期なんです。
例えば、今、営業セールスさんのためのシステムを担当しているのですが、それが1つ遅れてしまうと会社全体に影響が生じてしまう。売り上げの計画など年間で計画している中で、1つのシステムが遅れてしまうことで、全社的に計画が遅れてしまうということになるんです。
どうしても「納期的に間に合わない」というケースが出たとしても、例えば、段階的にリリースすることで実現させることもできるので、なるべく実際のセールスさんまでのところで影響がないように、情報システムや営業システム部の方々とお話ししながら進めています。
安立:当社は、行動規範の「隣の感覚」をとても大切にしているんです。 お客様と対面するのではなくて、僕たちは常に「隣」ということを忘れない。 お客様がシステムを作りたいと言っても、場合によっては、「これはExcelで回るので必要ありませんよ」といった「作らない提案」もしていきます。 僕たちからすると「隣の感覚」ということで、特別なことをしているわけではないんですが、「自分たちはシステムを作るチームで、お客様の業績を上げるためのチームなんだ」というようなスタンスが、お客様にとってみたらありがたい話になっているんじゃないかな、と感じています。
─ お客様は食品業界のメーカーさんになるのでしょうか?企業規模はどのくらいのお客様が多いのでしょうか?
安立:はい。企業規模は様々ですが、今、年商50億円以上ぐらいの食品メーカーさんを中心にご支援させていただいています。
─ 食品業界は御社の強みを大きく発揮できるところだと思うのですが、逆に、苦手な分野や、ちょっとお請けするのは難しいというケースはありますか?
久保:会社の理念に、「できませんを禁句とし、どうしたらできるかを提案」があるので、基本的には一緒に実現できる方法を探していきます。 ただ、僕個人的にはあまり技術を固定されてしまうと、ちょっと難しいのかな…と思ったりしています。
─技術を固定されるとはどういうことですか?
久保:例えば、パッケージの指定があって、「これで作ってくれ」と言われてしまうのは、会社としてはちょっと苦手なのかな、と思っています。もちろん調べはしますが、なるべく「一緒に考えたい」という思いがあるので、あまり全部を決め打ちされてしまうと、ご要望に沿うのはちょっと難しいかもしれません。
─ パッケージの他に、スクラッチ開発などのサービスもありますが、大雑把に言うとそれぞれの費用感はどのようになりますか?
安立:スクラッチ開発の場合、まずは小さな案件で当社の良さを知っていただきたい、という思いがあるので、10万円くらいで2・3日で終わるぐらいの仕事をやらせてもらうことが多いです。
需っ給さん(需給管理システム)は、初期費用10万円、月額12万円です。
衛生管理アプリ(入退出タブレット)はタブレット台数1台目1万円で、2台目以降は台数に応じてとなります。
─ 最後になりますが、御社のサービスをどのよう会社に使っていただきたいですか?どんな会社に御社を発見してもらいたいと思いますか?
安立:お客様から見て、大手システム会社の安心感はあると思いますが、当社はどの企業にも負けない業務知識の量と小回りの利くところが一番の強みだと思っているので、当社の競合というのは、それこそ日立さん、東芝さん、NTTデータさんといった大手さんになると思うんです。 ですので、これまで大手さんとしかお付き合いのない方がいましたら、小さな仕組みからでも構わないので、ぜひ当社の強みを体験していただきたいと思います。
坂口:大手さんには頼みづらいけど、自社内でもなかなか解決できにくい問題を持ってらっしゃる会社さんには、ぜひシグマクレストを知っていただきたいな、と思っています!
─ 本日は貴重なお話をありがとうございました。
会社名: | 株式会社シグマクレスト |
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HP: | https://sigma-crest.com/ |
代表取締役: | 高橋 和美 |
事業内容: | 製造業向け業務システムの設計開発サービス 製造業向け各種ITサービス |