─ 壷井さんはいつからゼータ・ブリッジに入られているんですか?
壷井:ゼータ・ブリッジ設立時は別の会社にいました。当社代表取締役の安藤とは、SONYに在籍時に同じ部門にいました。当時から会社設立に関わる仕事をしていたこともあり、安藤から「会社を設立する予定だ」と話がありました。
─ 壷井さんの専門は何でしょうか?
壷井:法律学を専攻していました。新卒で入社した電気通信会社で営業マンとして社会人デビューしました。最初は飛び込み営業をやっていました。
─ 営業を希望されたのですか?
壷井:新人の販売実習で運よく成果が出て、販売部門に配属されました。違うことをやりたかったのですが、希望はかないませんでした。(笑)
─ 才能がいきなり開花したんですね。
壷井:皆とは違う方法で販売したので、人事希望を出す前に販売部門への配属が決まっていたと思います。
入社から5年間は営業マンをやっていました。当時はインターネットの商用開始期で、新しい事業の種が多くまかれ、会社を設立したり、異業種の企業と業務提携が行われていました。その時期から新規事業開発に携わるようになりました。
社内での新規事業のみならず、会社を設立してゼロから事業を開発する経験もできました。
─ 出資をして、ですか。
壷井:複数の会社が出資し合って会社を設立することが多かったです。社員の個人出資は不可でした。
各会社が「テクノロジー」と「お金」と「人材」を持ち合いました。最先端の開発部門や研究所の方々と仕事をする機会に恵まれました。営業経験しかなかった私にはとても有益でした。
─ それからはずっとそのお仕事を?
壷井:あれからもう20年ほどになります。この仕事を始めたら、大手通信会社社にとどまっているよりも外の社会に出てみたい衝動にかられて、転職しました。転職先ではマザーズへのIPOも経験できました。
─ 新卒入社の会社を辞めたのはいつ頃ですか?
壷井:30歳の時です。勢いがありました、若気の至りかもしれません(笑)
電気通信会社は、知名度が高く「看板」効果があり、すぐにお客様に受け入れてもらえました。会社が優良なのに「自分が有能だ!」と勘違いするタイプだったんです(笑)
─ 新しい道に進んでみて、いかがでしたか?
壷井:それまでとは全く違う道でした。以来、自身の能力不足を感じ続けています。
「商品があって販路を持っている」のではなく「商品はあっても販路は無い」ので、国内で売るのか海外で売るのか、商品をセット売りした方が良いのか、などの戦略や仕事の設計からやらねばなりませんでした。そもそも市場はあるのか?という状態で疑心暗鬼になることありました。血気盛んな人が多かったからでしょうか、メンバーの仲たがいも多かったです。
専門分野にわかれて、仕事が分業化されている現在に比べて、当時は役割分担が明確ではなく、1人の守備範囲がとても広かったです。人数が少ないこともあって、働くメンバーは「法制度、営業、プロダクト、商品開発、マーケティング」等、ほとんど全てのことに携わっていました。
なんとなく形になりそうになったら、やっと人員が補充できるという感じでした。
─ 最初は、とにかくあらゆることをされたのですね?
壷井:そうですね。目論見通りにいかないことばかりでした。作れそうだけど作れない。始めたけど止めて。刺激には困ったことはないです。
─ 今もゼータ・ブリッジさんで色々とされているんですよね。
壷井:ゼータ・ブリッジではバックヤードの仕事をしています。
経理、財務、労務、法務などをやっています。社外の会計士、税理士、弁護士さん等の専門家に助けてもらっています。
それに加えて、今後は営業企画を強化する方針で、そのための仕組みと業務を作り始めています。
─ ゼータ・ブリッジさんの「画像認識」とは、どういう技術なんですか?
壷井:目視検査を「画像認識」で自動化する技術です。製品や部品のキズや汚れなどの不具合検出に貢献しています。この技術のベースは当社社長の安藤に拠っています。
社長は、元SONYの開発者です。アナログ時代からハイビジョンテレビを開発していた関係で、画像解析や画像処理分野に高い知見をもっています。
「技術要素」と「人の視聴」との親和性や関係性を研究していました。画像処理の広範囲な技術知識に加え、どのようにモニターに映し出すと人間の視覚にはどのように見えるのか、明るさ・コントラスト・ホワイトバランスはどのようにしたら良いかといった研究に日々研鑽を積み、「画像認識」についてのベースが培われました。
その時から積み重なる知識と実装までできる技術力を基に、画像に写る傷や汚れなどを検出するアルゴリズムを開発しています。
社長は既存の検査装置やディープラーニングでは検出できないケースも解決するアルゴリズムをも創り出す、いわば「天才技術者」です。
─ 具体的には、どのような方に喜ばれそうですか?
ゼータ・ブリッジさんの「画像検査」でここまで見つけられますよと言ったら。
壷井:これまで、既製の検査装置やディープラーニングを試したけど充分な結果を得られれなかった方に喜ばれています。全ての工場製品のことを把握しているわけでは無いのですが、当社の技術的な面からいうと「金属」や「化学」系が多くなっています。
「農産物」や「生物」は個体差が大きい場合は、開発工数が多くかかります。精度が上がらない場合もあります。
─ 傷の「影」の具合などを計算して、見つけ出すんですよね?
壷井:金属製品の傷には「影」ができます。画像に写っているその「影」を解析します。
分かりやすく言うとペンで線を書いた跡も、傷も線に見えます。その違いを見極める解決策の一つが影の有無です。
傷の方は凹んでいるから、わずかに影ができる点から解決します。
また、物質によっては反射光の画像を分析もします。その他にも多数の要素があり、その中から最も精度が高くなるパターンを見つけて実装まで行っています。
画像さえ持ってきてくれれば「正常と異常」の特長を見つけて、そこからアルゴリズムを作って、必ず結果を出します。
─ なぜ分かるんでしょうね。素材によっても違いがありますよね。
壷井:素材の特徴にも着目します。 例えば、割れる時に「金属」だったら直線的に線が入り、「木」だったらちょっとギザギザが入る、など。実際はもっと複雑で、ここまで話をしてきていまさらですが、私にもよく分からないです。
─ それを研究されているんでしょうか。
壷井:個々の課題ごとに仮説を立ててやっています。解決能力は高いのですが、再現性が弱い点が事業的には課題となっています。
今、社長をはじめ技術者のノウハウをいかにプログラムに落とし込めるかに取り組み始めています。私も話を聞いて「なるほどな」と思うのですが、形にするのがとても難しいです。
天才の話を凡人が聞いている状態です(笑)。求む!「天才の話を凡人に通訳できる人」です。
─ 「ゼータブリッジさんの製品を選んで良かった」と喜ばれるところはどういうところになりますか?
壷井:例えば某自動車部品メーカーさんでは、これまで既存の検査装置や機械学習による検査をトライしてきましたが、データの収集に時間を要し実用化に至らないケース、対象のキズや汚れが微小で見逃してしまう、というケースがありました。そこで我々は、少ないNG画像を元に人間の目で検知できるように小さなキズを浮き上がらせる独自のアルゴリズムを構築し、自動解析ソフトウェアを開発しました。今までが嘘のような劇的に優れた精度だと喜ばれました。
検査・検品を含み、生産性アップが生産現場の大きな関心事ですので、今まで100個作っていたものを120個に増やすことができる、10種類作っていたものを12種類に増やすことができる。となったらとても喜ばれます。不具合の発見をライン効率の向上、品質向上へつなげていただきます。
また、検査・検品をする熟練者は高齢化が進んでいて後任が見つからない。ここを機械化できるとインパクトは大きいはずです。
後継者がいないところには、後継者は「この製品です」と訴求できます。
─ やっぱり、人間の検査・検品よりも精度が高いのでしょうか。
壷井:そこは何とも言い難いのですが、実は人間の検査は優れています。人間は、目視以外の感覚(聴覚など)からも情報を得て、さらに過去の経験値も加味されて脳で情報処理されているようです。これ以上の情報をコンピューターにインプットしない限り勝てない可能性があります。
人間の視覚には視認可能範囲があります。本来は限度があるものなのですが、他の感覚や過去の経験から、推測能力でカバーされることもあります。
目で見ることに加え、叩いた時の音、物質固有の特性情報、人間の経験というのは見えている物以上のものをもたらしてくれます。
これをAIが超えられたら技術的特異点に達すると思います。
ここまでいけないから、まだ「AI」と「人間」が比べていられるのかもしれません。
AIが人間の経験や感性を超え、劇的に変わる社会に備えたいです。できればリードしていたいと思っています。
人間が優れているとしても、集中力が途切れたり、寝不足でパフォーマンスが落ちるということもあります、その点、機械の安定感は抜群です。今は一長一短かもしれないですね。
─ ゼータ・ブリッジさんは、そこを超えるというところに向かっているんですよね。
今後はどういったところをターゲットに、どういう方向性で進めていかれるのでしょうか。
壷井:後継者不足の会社が大きなターゲットになると思っています。いかに目視検査を機械に変えらえるかどうか。そういう人に提供したらきっと「ありがとう」と言われると思っています。
さらに、人の命に関わるような製品の欠陥を見つけられると良いなと思います。
ただ、常に100%の精度にならなければならない困難な道です。今は99.N%の0コンマ1の世界の段階です。
─ そうですよね。本当に検証・研究の繰り返しですね。貴重なお話をありがとうございます。
会社名: | 株式会社ゼータ・ブリッジ |
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HP: | https://www.zeta-bridge.com/ |
事業開始日: | 2001年10月10日 |
代表取締役: | 安藤 尚隆 |
事業内容: | 画像認識・コンテンツ認識ソリューション提供 認識アルゴリズムの研究開発 関連システムの開発・受託 スマートフォンアプリ開発 テレビCMメタデータ販売 モバイルコンテンツ企画運営 |