─ ビジネスパートナーの高橋さんとの出会いがきっかけで、色々と事業が展開していったのでしょうか?
木戸:私の中では一番大きいですね、彼との出会いが。
─ 個性派のお二人ですよね。
木戸:経歴が真逆なんですよね。私は専門のレストランをコンサルしたり、ソムリエもやってきたり。
高橋はまったく真逆の、チェーン展開をしている大手企業のマーケティングや販促をしているので、扱っている母数が全然違うんです。
彼が移住した千葉でやっていたオーベルジュ(滞在型レストラン)で、私がお客さんとしてたまたま出会ったんです。
そこで、シェフが1年後に辞めるので人手がいなくて困っているということで、私が飲食の人材紹介をやっているので、紹介してくれませんかと。しかし、東京に近いとはいえ、千葉の九十九里浜に移住してまでシェフとして働くという人はなかなかおらず。現地でそういうスキルのある人を見つけることも難しく、やむなく閉店になってしまったんです。
その時に、私が「うちで一緒にやろうよ」と引き込んだのがきっかけですね。
─ テレビドラマのようなお話ですね。
考え方やご経験が違う中で、新しい事業などを色々されていると思いますが、この二人のチームだからこそっていうのはどいういう点なのでしょうか。
木戸:経験を活かしてというのが一番ですかね。お互いに認め合っている部分がマクロとミクロの考え方・見方というところですね。
主に高橋が大きい母数に対して市場はどういうマーケットインとプロダクトアウトなのか、というのを全体的な視野で見ています。
私はその現場、一店舗であったり、一企業であったり、企業の中の一人事であったりと、そういうところにフォーカスして、お互いに市場開拓をしています。
大きい土台を彼が描き、私がそこにソフトを組み込んでいくような形ですね。
─ 手がけている事業のすべてにおいて、お二人の考えでやられているのですか?
木戸:そうですね、基本的にはそうですね。
木戸:私たち2人とも、飲食業界で人材について苦労をしているので、大手企業さんが抱えている悩みと、小さい個店での「一人でもすごく重要な存在価値を」というところで、自分たちの得意分野を活かしていきたいなと。
「人」となると流動性が激しく、決まりきったサービス提供をしていくと、時代に遅れていく、ということを私の過去の人材紹介派遣会社の経験から実感しています。
ブームが去ってしまえば、取り残されるので、企業さんの去年抱えていた悩みや、今抱えている悩みは来年に向けて、今後に向けて展開していく。我々はとにかく「人」にフォーカスして見ていますね。
木戸:映像に関しても、お互いに同じ感覚を持っており、1年前はそんなに実績がなかったんですが、企業様からの要望を聞くと、みんな同じような通り一辺倒の映像を作って欲しいと言われます。
本当にそれが供給側の求めているものなのか、情報を整理し、ブラッシュアップしながら、目的に合わせた動画制作をすることが必要だと感じており、今のところ私たちは5、6パターンぐらいのものを考えています。
─ 女性救急消防士さんの話など、いくつか求人映像を拝見して、現場の人にフォーカスした映像で面白いなと思いました。
そういうものが作れるのはなぜなんでしょうか?
木戸:一番最初のきっかけは、保育園でした。
1年以内に10園ほど開園予定があるので、それに向けて求人採用のためのムービーを作って欲しいという要望があったんです。
働く保育士さんが何を求めているか、また、保育士さんだけでなく親御さんが見ることも考えたら横展開や汎用性があるか、など具体的に深くヒアリングをしますね。
お金と時間と手間とキャリアをつぎ込めば、作りたい映像はいくらでも作れると思うのですが、作りたいことを全面に出しても、本当に欲しい人は集まらないんです。
具体的なターゲット層を絞り込んで行き、そのターゲット層に対して、我々がヒアリングをして、どういう映像を作るのか具現化していきます。
その保育園では、去年入社した保育士さんや親御さんのインタビューを入れたり、お子さんが保育園でどう成長していくのか過程を見せたり、というような動画を制作しました。
─ 『人』と丁寧に関係を作っていくということを、とても大切にされていますよね。
木戸:飲食店の話をすると、飲食店の必要とされている3つの要素は『場所』『料理』『人』なんです。
これまで、飲食店の集客・採用に関しての競合は飲食店だったんですよ。
飲食店同士の競合であったはずが、1つ目の『場所』に関して、今は「部屋貸し」のようなところも競合になっているんです。
例えば「東京タワーの見えるリビングを貸します。」など。場所が良ければ、高級レストランや個室の居酒屋さんに行かなくても楽しめると。
2つ目の『料理』に関しては、そこに宅配や出張シェフなど頼めば、それなりのクオリティ以上のものが食べられるんですよね。そういったところも競合になっています。
3つ目の『人』に関して、我々が動くことで、潜在的なその人のポテンシャルを引き出せると思っています。
例えば、飲食のスキルが全く無くても、フォロワー数が10万人いるインスタグラマーが、飲食店で働きながら発信すると、3万人を集客できちゃうとか。
『人』でしかできない横展開、『人』であるからこそ生まれる新しい価値、ということに着目し、『お店の運営』と『人が働くということを多様化させる』を一番の目的にしています。
─ ご自身は社長に向いてらっしゃると思いますか?
木戸:経営者としては、向いてないかもしれないですね。
まず、僕自身ものすごく学があって、経営のロジックを自分の中に身につけているわけではないんです。
なので、キャリア、自分にない能力、自分より高い能力、自分が欲しい能力を誰かにやってもらおうという、ある種他力本願の部分があったりするんですけど。
正直、僕は映像も作れないですし、飲食店を1000店舗チェーン展開できるノウハウも持ってないですし。
その中で、自分ができることというのは、人の採用であったり、人のポテンシャルを上げる、言葉は悪いかもしれないですけど、「人心掌握術」っていうのは、よく言ってましたね。
─ 人を惹きつける力ということですか。
木戸:「なんかこの人面白そう」とか、「この人のために何かをやりたい」とか。そういうことを思わせるのが得意というか好きというか。
オンラインももちろんですが、オフラインの重要性をものすごく感じてまして、やっぱり人が集まって、何か触れ合ったりとか、同じモチベーションじゃなくてもいいと思うんですけど、何か新しいものが創造されるような場の提供と言いますか。
そのためには、この人面白そう!という人が一人いて、その人が何もできなくても、その人に集まってくる能力さえあれば、あとは勝手に各々でコミュニケーション取り始めておもしろいことが創造されるのかな、という気がしています。
─ そういう観点では、完全に経営者ですね。
木戸:正直、トップダウンの経営者や、いわゆるお金持ちになりたいとは全く思わなくて。
それよりは、面白そうだから木戸さんと「一緒にやってみよう」という人たちが豊かになっていく方が僕は本望かなと思っています。
飲食店でソムリエとして従事していた時、一番達成感を感じたのは、来ていただいて料理を召し上がっていただいて、僕がサジェストするおすすめするワインとかセレクトの中で召し上がっていただいたお客様が、高額なお金を払うわけじゃないですか。ワイン1本10万円とかを飲んだりするので。その帰りにありがとうって言ってくれるんですね。お金を払ってくれた人が僕にありがとう、と。その快楽が、自分にとっての一番で、働くという意義が持てるというか。
次来るときはもっといいもの、その人が出会ったことがないような料理や、ワインをインプットしていきながら、それを積み上げていき、お客さんとの関係構築をしていくことで、それの付加価値として、お金っていうのが対価として出てくるのかな、とは思ってましたけど。
安いねとか、うまいねよりも、「ありがとう」が欲しいですね。
会社の成長というところでは、5年で100億とか上場とか、そういう事には、あまりピンとは来ていないです。
それよりも長く継続できて、少しずつ市場開拓されていって、何か僕たちがやったことで、ちょっと変化が起きて、それがいいことに変わる転換期がくればな、と思っています。
─ この先の夢は何ですか?
木戸:事業をもっと伸ばすことですかね。まずは、雇用のところで人が働く価値をあげる。
その価値は今の世の中では、「お金」と「自分のポテンシャル、スキル」だと思いますので、そこにフォーカスしながら、そうじゃない価値も見出していきたいなと思っています。それが、お金を払う側とお金を受け取る側がイーブンになるってことなのかなと考えています。
─ ご出身は福島とのことですが、お戻りなったりされますか?
木戸:はい、出身は福島の会津若松なんです。
冬は雪が深いですので、3、4年に一度、夏に子供たちを連れて、おじいちゃんおばあちゃんに会いに行く感じですかね。
─ どういうお父さんなんですか。怖い?優しい?
木戸:上の子には厳しいって言われますね。
毎朝、朝食は私が作るという決め事がありまして。それには理由があって、夜不摂生をしないために、そのルールを自分に課しているんですね。
それがないと、夜、遅くまで仕事をしたり、お酒を飲みに行ってしまうので。
そもそも料理が好きというのもあって、下の子が生まれてから丸2年半ほど朝食は僕が作っています。
─ お子さんとはどういった関わり合いをされるのですか?
木戸:子供は、小4女の子と2歳の男の子なんですが、上の子が「下剋上受験」というドラマの影響で、自分で中学受験の目標を決めましたので、そこから計画を一緒に作ったり、一緒に勉強をしたり。
─ お子さんと一緒に、受験という一つの目標に向かっているのですね。
木戸:そうですね、僕がすごい勉強なりますね。オンライン教材を見ると、毎年子供や時代に合わせてアップデートされて面白いので、僕も一緒に勉強している感じです。
─ お子さんにとっても、木戸さんにとっても素敵な経験になりますね。
お仕事のお話からご家庭での様子まで、貴重なお話をありがとうございました。
会社名: | 株式会社ESCAPE TOKYO |
---|---|
HP: | https://escape-tokyo.com/ |
設立: | 2017年11月1日 |
代表取締役: | 木戸 卓樹 |
事業: | 求人動画メディア/ESCAPE TOKYO 求人動画制作/COMO MOVIE |