─ 御社はとても長い歴史を持ってらっしゃるんですね?
飯塚:はい、1957年創業で妻の祖父が初代です。
私が社長になって10年目なので、配分すると16年、20年、10年、10年ぐらいで合わせて56期ですね。
─ なるほど、長い歴史ですね!とても大変だったのでは・・?
飯塚:色々ありまして、次の社長をやるはずだった方が退職することになりました。
私は社長になるはずだった方をサポートする予定で入社したのですが、私が社長をすることになりました。
─ この10年で何が一番大変でしたか?
飯塚:ものづくりでずっと生きてきた企業でございまして、それこそ黒電話のコイル巻きから起業した会社になっておりますので、「営業は経営陣がやればいい」という考えで、技術者ばかり雇っていました。
ものづくりで景気がいいときは働いた分だけ時給がどんどん上がっていくという時期もありましたが、人件費の安い中国に仕事が取られたり、いい仕事が見つかったと言ってパソコン修理を月2〜3000千台やっていたら、お客様の会社が台湾の会社に買収されて無くなったり。その流れでサポートの仕事も無くなっていきました。
酷いときは入社時の5分の1以下まで売り上げが落ちて、リストラもして社員の数も20人切ったこともあったんじゃないかな。
あの時はこのまま倒産するんだろうな、と思っていました。それが20年前…とにかく次の手を打っておかないといけない、と日本医師会が作ったレセプトソフトORCA(オルカ)を販売する仕事を始めました。
レセプトソフトORCAと並行してものづくりもずっとやっていました。ものづくりで出た余力をレセプト販売の方に使っていたんです。
ものづくりが終わるころにはORCA販売は一事業部として成立しているだろうと予想し、伸ばしていこうと話していました。しかし、立ち上がらないうちにものづくりは終わりを迎え、売り上げはない。大量の従業員を抱え、辛さの極みでした。
─ そういった辛いときというのは、どういうモチベーションになるのですか?結論的には、倒産していらっしゃらない。現在に至る経緯をお聞かせください。
飯塚:まず従業員同士で雇用を分け合う「ワークシェアリング」を取り、会社に来るのは週1回でも2回で構わない、なんだったら俺がちゃんとした仕事を探すから、という面談を当時の従業員40人以上にしました。
やはり、退職金はどうするんだとか、色々言われるわけですよ。
でも、泣く泣く辞めていただくしかないです。
営業ができる人は、ORCA販売の営業マンとして働いていただくことにしました。
他の人は、基本的に全員工場勤務だった人間なので、今さら背広は着たくない、外に出かけたくない、知らない人に名刺を持って挨拶なんかしたくないと、ないないだらけだったので、やっぱり仕事を探してくることになります。
なので、モチベーションとかは関係ないですね。もう非情にならなければいけないときは、やっぱりかなり非情になりましたし。
─ そうなんですね。
経営者にさえならなければ、そんな経験なんかないですからね、普通はね。
飯塚:そうですね。
─ 5年前に入社された牧田さんは、なぜこの会社を選んだのですか?
牧田:この会社が現在3社目ですが、ずっとIT業界にいてORCAを知っていました。インターネットでORCAを調査したら関東でシェア20%だったので、履歴書を送りました。
忘れた頃に面接のお話がありまして、1回、2回、最終の社長面接をして入社が決まりました。
─ 5年間、実際にお仕事されてみてどうですか?
牧田:そこそこ売れているので、営業としては面白いかなと思っています。
お客様が個人事業主である病院の先生ですから、話が早いのです。
─ それはいいですね。営業が面白いと言っているうちは必ず売れますからね。
飯塚:私もそう信じてやまないです。特に、牧田は思い入れが強い社員なんです。
この業界は営業がとにかく集まらない。営業として採用しても、売れないで辞めていくとかで困っていました。
それが去年ぐらいからだんだん定着してきまして、営業はできないんだけど製品についての知識は非常にある人間ですとか、そういう人間が集まってきたんですよね。
そこで牧田に営業を外れろ、と伝えました。
「1個のものを売ってくる」すなわち顧客担当営業はもう外れて、「ものが売れるためのネタ作り」つまり新規開拓をしなさいよ、と言いました。
なぜならうちの営業部隊は、10個パイがあったら5個取って来られる自信がある、と弊社の営業部長は言うんですね。でもうちの会社はパイが5個もないので、10個用意してやろうじゃないか、という話です。
牧田にその10個のパイを用意する側の人間になってくれと言いました。それを用意してくるのが一番難しい仕事なんですね。
チャンネル替えや視点も変えて、10個のパイを用意することを第1クールまで終わりました。
現在は第2クールに入っているんですが、牧田は非常に適任だと思っております。徐々にパイが増え始めているので、私としては嬉しいです。
─ 御社は一言で言ったらどんな会社ですか?
飯塚:昔は、歴史のある真面目な会社と言っていました。
しかし今は、一言で表すと「ただひたすら前向きな会社」だと思います。
私は新しいこと好きなんで、今までやったことないことや、行ったことない場所、そこで何かできることはないかと考えます。例えば他人がやっていることで、二番煎じでも、そこに面白さや夢、希望を感じたりするとワクワクするところが多いですね。
─ そういう前向きさを感じます。
相当のご苦労されたはずなんですが、そんな中で芽を見つけて上に引き上げたりされていることも前向きさの証かと存じます。そして、営業部隊がちょっと落ち着いてきたというのはすごい成果ですね。
飯塚:非常にありがたいことです。私は営業至上主義なので、営業さえいれば大丈夫と思っています。
牧田は新規開拓のポジションに就いてから、いろいろ探してきてくれています。
例えば株式会社エグゼクティブの様な外部で営業委託を受けている会社がある、というのは私の知識にはないので、そういう世の中での知らないことを知っていくと面白くなってきています。
─ これまでにお客様のところにお邪魔して、間違いなく喜んでもらったエピソードはありますか?
飯塚:はい。現在も少し残っていますが、つい最近喜んで頂けたかなというエピソードがありました。
すごく懇意にしてもらっている会社さんのお話です。お客様にたくさんのパソコンを無償貸与していて、そのパソコン全てをWindows7からWindows10に換えなければならないということがありました。
約1,300台ぐらいのパソコンがあり、設置場所は、北は千葉から南は沖縄まで。そして、とくかく時間がなく、全員頭から煙が出ているような状態だったそうです。
そしてお話を受けたときに、うちの会社なら「どこよりも安く、どこよりも早くできる」という自信がありました。
なぜならば、別件でお世話になっている全国規模でパソコン対応できる会社さんとのお付き合いがあり、その会社さんが網羅しているので、パソコンの設置と設定は大丈夫だと確信しました。
また、その仕事は大阪拠点でやらなければいけなかったのですが、大阪から全国に飛べる技術の人間が手配できることもありました。
昔から仲良くしていただいている家電量販店さんが大阪にあり、そこの法人営業部を使うとどこよりも安くパソコンを入手できることがわかっています。これらの三位一体が頭の中でポンと浮かんだので、それを会社の部長さんにプレゼンで持って行きました。
部長さんは「まさかできないでしょう、1300だよ?」と驚かれましたが、プレゼンを出したところ、次の週に決裁が下り実行となりました。
ほぼ終わりが見えた頃の会議の最後に「いやー、幸せです」と呟いたら、そこの一番偉い執行役員の方が、「何言っているの幸せなのはこっちだよ」と言っていただいたのが非常にうれしかったですね。
新しいものが好きで色々なことに手を出した結果、チャンネルが揃っていたので、絶対できると確信し、契約を取ってきました。
─ すごいですね。何とかしなきゃいけないけれど、誰もできていなかったということですよね。
飯塚:はい。他の会社からも見積もりが来ていたみたいですけれど、ものすごく高かったり、足元見られたり、中途半端な条件を付けられたりとか、少し困っていた様です。
─ そこに、何だかできるぞ、という感じで現れたんですね。
飯塚:はい。その後、似たような案件をその1、2カ月でドタバタといただいので、仕事がまた別な仕事を生んだ形になりました。
─ やはり成功要因としては、いろんなところに目を向けて役に立つかどうか分からないけど、チャネルを作ってきたからでしょうか?
飯塚:はい。例えばお仕事を頂いたり、逆にお仕事をお願いしたりする中で、それを組み合わせたらこの仕事ができるね、ということもあります。
─ あえてご質問させていただきたいんですけれども、その上場企業さんのOSバージョンアップ、それはとてもリスクのある仕事だったのでは?
万が一のことがあると、損害賠償問題になってしまうと思うんですよ。
飯塚:抱えるリスクについては、ほぼゼロだと思っていました。
パソコンを1,300台入れることについては、医療機関なので一番そこが怖がられるところなんですけど、医療機関だって全部のことが命に関わるわけじゃないですよね。
パソコンでうまく飛んでこなかったら、ファックスでも紙でもいいんです。どんな方法でも回避できると考えるとリスクは無いということになります。パソコンの製造問題というリスクはメーカーの責任ですので、そっちのリスクも無かったです。
唯一リスクとしてあったとすれば、医療機関なので、汚れた服で行ったとなると、もうそれだけで信頼関係が危ぶまれる。外部のリソースを使うからそこまではコントロールが及ばない。ただ、今まで何回もうちの仕事をしていただいているところなので、信頼関係がありました。
例えば家電量販店さんの対応ですが、銘柄指定もせず、スペックだけ伝えて丸投げした。そうしたら、間違いないからここのメーカーにしましょう、って向こうから提案が来てました。
今はインターネットで検索すればパソコンの値段なんて出てきちゃうじゃないですか。出てくる値段よりはるかに下回っている値段でした。
─ 世の中にはまだ御社のことを知らない会社もいっぱいありますね。
先程伺ったパソコン1300台のように、御社のことを知っていれば良いことが起こるかもしれないですよね。
今後は、どういう会社に声を掛けて頂きたいですか?すごいいい提案できるのにな、という会社を具体的にお聞かせください。
飯塚:やっぱり一番の主力は、メディカル事業部というレセプトコンピューターを卸す事業なので、ITや、IT以外でも何かで困っている医療機関に是非お声掛け頂きたいです。
─ ITや何かで困っている医療機関ですね!
世の中には御社と類似の会社もあるわけですが、その中でもやはり御社だからできることは何ですか?
飯塚:今でしたら19床以下の診療所やクリニックにおいて、入ってから診察を終えて出るまでの全てのものをご用意できます。例えば紙1枚や鉛筆1本から、一番お金のかかる医療機器まで全て調達もできますし、何だったらスタッフの調達もできます。
─ なるほど。それもやっぱり御社の培ってきたチャネルでございますかね。
飯塚:そうですね。それはもうスタッフが作ってくれたチャネル以外の何物でもないです。
ちゃんと機能するチャネルが、ピンからキリまである自信があります。
お声掛け頂ければとても嬉しいです。
─ 安心ですね。とても貴重なお話をありがとうございました。
会社名: | 株式会社IDK |
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HP: | https://www.idkcorp.com/ |
創業: | 昭和32年5月 |
代表取締役: | 飯塚 向平 |
事業内容: | 医療システム・ソフト・機器の販売およびサポート、PC関連事業 |