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【8日目】営業管理の常識は90%間違っている。営業マンは売上に責任を持つべきか?

「売上を上げるまでにはさまざまな工程がある」

ある会社の代表者と話をしたときのことです。内容はよくある話なのですが、「うちの営業マンが、目標達成の意識が低くて困っている」というのです。「今月は1人あたり1千万円の売上が必要なのに、理由はわからないが、その半分で申請してきているんだ!」と、怒りと落胆が入り混じったような様子でした。
売上目標をどう管理するのか。これはどの会社でも深刻な問題です。

ほとんどの会社では、営業担当者個人に売上目標が与えられています。「売上を上げるのが営業マン」であり、「売上で管理されるのが営業マン」だと思っている会社や上司が多いのです。今月の売上目標が1千万円なら、「なんとかして1千万円の売上を集めてこい!」というわけです。ですが、上司からこのように言われて、自分の力で目標を達成できる営業担当者はどれくらいいるでしょうか。

売上目標の達成が難しい理由のひとつに、「売上を上げる」という目標そのものが漠然としているということがあります。売上に至るまでにはいくつもの営業活動が必要なのに、それらをまったく考慮せず、最後の「売上」だけを目標にしているからわかりにくいのです。

図8-1)売上に至るまでの工程売上に至るまでの工程をざっと挙げてみると、【電話営業】→【訪問】→【案件化】→【提案】→【契約】と、じつにさまざまな工程があることがわかります。ベテランの営業担当者であれば、売上目標を達成するには、各工程にブレイクダウンした目標をひとつずつクリアしていけばいいとわかりますが、経験の浅い営業担当者にとっては、売上目標をどうやって達成すればいいのかわからないというのが本当のところでしょう。

1千万円の売上を上げるためには、何社から契約を取る必要があって、そのためには何社との商談が必要で……。新人の営業担当者には、具体的な行動を示してあげる必要があるのです。

しかし、実際には、こうした配慮がまったくなされていない営業現場がほとんどです。

たとえば、営業会議を思い起こしてください。営業部長を筆頭に、課長、係長、営業担当者など総勢10名ほどが集まるとしましょう。新人の営業担当者から順に、提出した商談表をもとに進捗状況を報告していきます。

「ところで、A社はどうなった?」

「……。」

「なんでA社にちゃんと見積出してないの?
 で、今期の売上は?」

「売上目標5千万円に対して、
 売上見込みは4千万円。進捗率は80%です。」

営業会議は大概こんな話になりますが、私から見れば、新人の営業担当者に提案や商談を任せていること自体が間違っているように思えます。提案や商談のような営業活動の後工程に位置する業務は、それなりの経験やスキルが必要になってくるので、上司が担当するのがふさわしいと思うからです。

「上司には、営業担当者の精度を高めていく責任がある。」

そもそも、営業担当者個人に売上目標を与えること自体がナンセンスです。営業担当者に売上目標を与えるということは、極端な話、新人社員に部門の事業計画を任せるようなものです。「来期の事業計画はどうなってる?」と当然のようにたずねられても、「そんなことを私に言われても困ります」とあなたが新人社員なら思いますよね。

現場の営業担当者がまずやるべきことは、営業の電話をかけ、アポイントを獲得するといった営業活動の各工程をひとつひとつ実践していくことです。その部分を責任をもって確実にこなしていくことで、結果的に売上目標が達成されていくのです。

それに対して、上司が果たすべき役割は、各担当者の営業活動を指導し、管理することです。売上から逆算して割り出した電話営業のコール件数や、アポイント獲得数、会社訪問数といった具体的な目標を各担当者に与え、それらの活動が計画どおりに行われているかを管理します。営業活動が計画どおりに進まなかったり、目標達成が困難になるような場合には、上司の管理に問題があると考えるべきです。

したがって、「営業マンは売上に責任をもつべきか」という問いの答えはこうです。

最終的に売上目標に責任を持つのは、上司です。


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